「上野戦争」
慶応4年(1868)2月に、旧幕臣隊によって結成された一隊。
上野の寛永寺を屯所とし、江戸市中の巡回警備、徳川慶喜の護衛を名目としたが
実際は遠からず江戸に攻め入る西軍と戦い、江戸を死守する抵抗軍であった。
流山に集結した新選組と呼応していたが、新選組が崩れ、彰義隊は上野山中に
孤立する。
4月11日江戸城は無血開城したが、彰義隊は此れを不満とし、新政府に対抗した。
5月15日大村益次郎の指揮する新政府軍が圧倒的火力で彰義隊の籠もる、上野
の山を総攻撃する、"上野戦争"で彰義隊は1日で壊滅する。
"寂しくはためく、一番隊旗"
徳川慶喜の側近家来で彰義隊に同士を募った小川興郷は画家に指示して描かせたもので他に存在する
錦絵と違って忠実な絵と伝えられる。
◇リアルな戦いの絵図
5月15日八つ半(午前3時)、東征軍1万2千の軍勢は江戸城の二重橋の外に集結し、七つ刻(午前3時)
霧雨の中出撃する。
上野の要となる正面の黒門口に向かうのは薩摩、因幡、肥後の3藩。根津、谷中を担当する長州、佐賀
久留米、佐土原、大村らの所隊が出陣した。他の所隊神田川の線を守備し、第二の防衛線と設定し、非
戦闘地域に戦火が拡大しないよう配備した。
六つ半(午前7時)黒門口に向かった一番遊撃隊に対する足軽隊の発砲によって開戦となる。
午前中の戦況は彰義隊有利に展開した。所が午後になって東征軍のアームストロング砲により、戦局は
一変した。もっともこれには裏があって、大村が事前に長州の一隊を会津支援隊と偽って、上野に入れて
いたのが、砲声を合図に正体を表し、山内がパニックになったのが真相である。
夕刻、彰義隊は這走した。首領の天野八郎は運良く根岸の里に出、江戸府内に潜伏したが。7月13日、
発見され捕縛された。・・・「天野八郎と彰義隊」加来耕三著から
矢印は生生しい弾痕跡
上野戦争の主戦場となった黒門、明治40年に上野の山内より戊辰戦争の記念物として
現在南千住の円通寺に移築された。
◇戦いの火蓋はきられた
◇黒門跡
◇彰義隊墓
彰義隊が破れても、江戸ッ子の徳川との厚い絆はきれなかった。
彰義隊がちりじりになって逃げるとき、何とかうまく逃げて欲しいと言う義侠心さえ生まれたようだ。
神田の三河屋の幸三郎は上野の山に官軍の死体は片づけられているのに、彰義隊はごろごろ放り
ぱなしにたまり兼ね、三ノ輪の円通寺「大禪佛磨大和尚」と相談し、官軍側に荼毘の許可を得た。
若い集を動員し266の死体を集め、山王台に埋め、円通寺で手厚く葬った。
三河屋の幸三郎の自費で一切をやったという。下町江戸っ子の美談として讃えられている。
□円通寺(南千住)
彰義隊の供養に尽力した三河屋幸三郎はが向島の別荘に
旧幕府軍の墓を秘そかに立て戦死者を供養した。
鳥羽、伏見から、会津、函館の戊辰戦争軌跡を辿りながら、
戊辰の始まりから終わりまでの関わりのある、戦死者が明記さ
れてある。
時の新政府から賊軍扱いとされ、おおぴらに供養出来なかったが
彰義隊の供養許可を得た後に墓石を移築し、彰義隊と一緒に
供養出来る様になった。
墓石には97名にも及ぶ、名前が書かれているが近藤勇、土方
歳三などやが神木隊(しんぼくたい)28名の名前がある。
◇死節之墓
榊原家は元々高田藩で徳川創業以来270年間使えてきた、徳川四天王(井伊、本多、酒井、榊原)と称される、
由緒ある家である。徳川慶喜が大政奉還し、藩主のいる国元では朝廷に恭順の意志を表したが、江戸詰め
侍は脱藩して約86名が「神木隊」を結成し、旧幕軍に身を投じ、上野山で壮烈な死闘を演じた。
神木隊の名は榊原の榊の字を二字に分けて付けられたものである。
神木隊は浩気隊と穴稲荷門(現花園稲荷神社)で大砲と小銃で構え、不忍池を小舟に乗って弁天の中島から
来る倒幕軍を迎え撃った。しかし、要となる黒門口(現京成上野駅付近)が破られると穴稲荷門も皆破られた。
弾丸を全身に受けながらも敵軍に立ち向かい山内の清水堂割腹したり、14、5名の敵に取り囲まれ落命し、死後
蹂躙されたり、なぶり殺しにされそうになった者など凄惨極めた戦いであったようだ。
上野の山での戦いでは17名戦死したと言われている。時あたかも残兵を集め榎本武揚率いる軍艦の中に神木隊
の隊長の酒井良左以下の面々もいたようで、品川沖を脱出し函館へ向かった。
函館五稜郭では新政府軍と戦い、5月11日の新政府軍の総攻撃にあい、18日降伏し、戊辰戦争が集結する
まで旧幕軍の一部として最後まで戦った。
池袋の清慶山本立寺の境内の御本堂前に「神木隊戊辰戦死の碑」が建っており、上野の山の戦い、および 函
館五稜郭の戦いで26名の戦死者の名前が載っている。・・・「高田藩神木隊」玉城妙子著から
◇神木隊
□彰義隊の墓
円通寺(南千住)〜上野公園
戊辰戦争もその舞台を東に移してきた、1日で終わってしまった上野戦争を舞台に彰義隊と対峙する
東征軍の姿を追ってみる。